物価高が続く昨今、給料も大して上がらないのに生活を切り詰めなくてはやってられない、なんてお話をよく耳にするようになりました。
住宅や土地の価格も例外なく、値上げが続いています。
デフレからインフレとなり、日経平均株価が過去最高となって、土地の価格も大幅に上昇、給与も大手はそれなりにアップして、と昔経験したバブルを思い出させるような景気回復を唱える反面、実生活では実感ない、むしろキツイという今、住宅屋としての家の価格について考えたいと思います。
家は昔から、今でも坪〇〇万円と言われてきました。
近年のお問い合わせでは予算いくらと言われることも増えてきましたが、立ち話程度には、大体、坪いくらくらいなの?と聞かれます。
なぜ坪単価にするかというと、その価格が比較しやすいからだと思います。
土地探しのお手伝いの時などは、土地情報などの価格を必ず坪単価に割返します。そうすることで、その土地の相場観を確認したりするのです。
それをしないと、価値以上の価格で購入してしまうこともあるからです。
スーパーで買い物するときに、安い!と思って思わずカゴに放り込んで、いざレジでは驚く値段が。
100gの値段が書いてあったのか!と笑い話も経験したことありますが、安くても量が少ないとか、価値より設定価格が高いものは結構あるものです
坪単価の考え方は建設会社によって違います。
価格を面積で割ったものが単価ですから、面積が大きいほど単価は安くなります。
そこで、面積を大きくするために実際の床面積ではなく、吹き抜けなども含めた総面積であったり、外部のバルコニーなどを含んだ面積であったり、各社バラバラです。
内容も、仮設工事(例えば足場など)や別途必ず必要な工事(エアコンやカーテン、網戸)、外構工事、地盤改良など含んだり含まなかったりするので、資金計画書や見積書で確認が必要です。
厳密に言うと価格は建物の形によっても違うはずです。
同じ100という面積の建物であれば、坪単価が同じなら同価格ですが、実際には壁の面積が変わるため、詳細な見積もりでは金額が変わります。
四角い家で
5✖️20と10✖️10はどちらも100
でも外周は5+5+20+20=50
10+10+10+10=40
と10の差が出ています。
このように坪単価のカラクリを知っていると正しい価格の判断がつきやすくなると思います。
家の造り方によっても価格は変わります。
現在の法律(建築基準法)ではほとんどの2階建の木造住宅は確認申請の際に構造計算の提出義務がありません。設計では必要な壁の量などを計算しますが、提出義務がないため、計算すらしていなかったり、最低限のものであったりします。
そうすることで、柱の数や耐力壁などが充分でない家も存在します。
耐力壁には、最近では構造用合板(耐力壁)を張る(ツーバイフォーのようなイメージ)工法も増えていますが、柱に直接透湿防水シートを張っている現場をよく見かけます。
※弊社扱いのスーパーウォールは合板(パーティクルボード)と断熱材がセットになっている
また、弊社では91センチ(3尺)間隔に柱がありますが、182センチ(6尺)間隔のところもあります。
一般的な大きさ30坪〜35坪ぐらいの家で比べると、それだけで80万円〜の価格差が生まれます。
※ちなみに透湿防水紙だけの施工でも筋交や金物をきちんと施工していれば耐震性能は確保できます。
断熱材の施工、気密の施工など職人技術に一定以上の技量が必要になります。
断熱、気密については別コラムをご覧ください
耐震等級が上がれば基礎鉄筋コンクリートや金物、木材などより堅固にするために工事費がアップします。
構造の計算に関する設計の費用や長期優良住宅などの認定も含めると50万円〜ぐらいの価格アップです。
※耐震性能や長期優良住宅は保険料や税金の優遇があるため充分に元が取れますし、何より安心で資産価値も高くなります
仕上げ材、設備などによっても価格は増減しますので、単純に家が坪いくらで判断してはいけないかがわかると思います。
車は燃費や安全性が飛躍的に向上し、価格も大幅に上がりました。
購入の際の補助、燃費の向上によるランニングコストの削減、安全装置も充実して運転もし易く環境にも優しい方向に進んでいます。
家も一緒です。
住宅の性能ラベル、性能評価というものがあります。
断熱や耐震の性能を等級化しその家が持つ性能を見ることができます。
車のように、燃費(光熱費)も表示されます。
※気密性能については除外されていますが必要な性能のため、測定しているかは確認が必要です。(弊社では建築中、完成時の2回の測定を実施します)
測定はやらなくても大体わかる、やったりやらなかったり、カタログ値、などは性能を担保できていないと断定できますので避けた方が良いと思います。
断熱性能が良ければ、光熱費は日々削減されます。
設計手法も相まってより低燃費となります。
冬でも無暖房、夏はエアコン1台の能力でも家中を涼しくすることも可能です。
再生可能エネルギー(主に太陽光)や蓄電池で電気を買わなくても済む家もできるのです。
耐震性能が良ければ、大地震、台風などの震災時に威力を発揮します。
現在の建築基準法は最低限の性能を規定しています。
大地震では一度だけ命は守りますが、そのまま住み続けることはできません。
つまり、避難所などで仮住まいを余儀なくされ、
大規模な改修や建て替えのために大きな出費を伴います。
耐震等級3(最高等級)は、震災の際にそのまま住み続けけることができます。
修繕もほぼなく、定期的なメンテナンスをキチンと行うことで、大きな出費を抑制できます。
今年の夏は猛暑日の日数など記録を更新し、熱中症によって亡くなる方も多くいらっしゃいましたが、約4割は家の中と言われています。
室内温度差によるヒートショックにより年間1万7千人もの方が亡くなっています。
室温は体調に大きく影響することがわかっていますが、家の断熱性能を上げることで病気にかかりにくくなり医療費も削減します。
LIXILと近畿大学の共同研究では、内窓の改修で光熱費と合わせて医療費も年間3万円.30年で約100万円削減できるそうです。
高性能な住宅は30年と言わずそれ以上使い続けることができますので、その間、健康で快適、経済的な暮らしが出来るということになります。
以上を見てくると、性能のしっかりした家は結果『安い!』ことがわかります。
見積りや表示された金額に左右されないで、
住宅の性能による光熱費やメンテナンスにかかるコスト、健康、医療などの生涯の住居コストを比較することで、家の価値を判断しましょう。