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気密性能と建物の健康

住宅の健康状態について考えてみたいと思います。
皆さんは、健康診断を受けたことがあると思いますが、その時にいろいろな数値によって健康かどうかの判断をしています。
例えば血糖値が高いと糖尿病や心筋梗塞などのリスクが生じることから生活習慣の改善をするようにお医者さんから指導されるでしょう。

住宅の場合、住宅性能の数値や等級によって健康状態を知ることができます。
住宅性能評価には
1、地震などに対する強さ
2、火災に対する安全性
3、柱や土台などの耐久性
4、配管の清掃や補修のしやすさ、更新対策
5、省エネルギー対策
6、シックハウス対策・換気
7、窓の面積
8、遮音対策
9、高齢者や障がい者への配慮
10、防犯対策

以上の10の分野で32項目の表示項目があります。
これらを評価することで建物の健康状態を把握することができますので、家を建てる時の判断基準にすることができるわけです。
人も住宅も「健康」であることが大事!ならば、必ずこの数値や等級を確認するべきですよね。

各性能に影響する気密性能

住宅性能を表すものの中にとても重要な気密性能というものがあります。なぜ重要なのかは後ほど詳しく説明をいたしますが、
この気密性は住宅性能に影響を与えるといって過言ではありません。
『風邪は万病の元』 と言われます。
風邪のような些細な病でも、放置するといろいろな病気になってしまう原因になってしまうことを言います。
元は風邪でも細菌感染症を合併してくる場合があります。
慢性疾患を抱えている場合などは風邪がきっかけで病態を悪化させてしまうこともあります。風邪というのは様々な病態とかかわってくるわけです。
建物の「気密性」というのは人の健康でいうところの「風邪」なわけです。放っておくと住宅性能を著しく悪化させてしまいます。

省エネルギー基準における気密性能

国の省エネルギー基準では気密性能の表記が除外されました。
「一定程度の気密性が確保される状況にあること、また住宅性能表示制度における特別評価方法認定の蓄積により多様な方法による
気密性能の確保が可能であることが明らかになって…云々」ということで、とにかく気密性能は表記しなくていいよ(なんなら測定しなくてもOK)というのが現状です。
気密性の確保のためには、高度な専門知識と高度な施工技術が欠かせません。専用部材を使用し、丁寧な施工が必要なため日数も要しますのでコストもかかります。
(ただし、かけたコストは必ず元が取れます!※後記にて)
そのため、高気密化はハードルが高いために基準から除外されてしまったのが本音でしょう。

気密性能の数値

気密性能は相当隙間面積「C値」(シーチ)で表します。建物全体の隙間面積(㎠)を延床面積(㎡)で割った数値で単位は㎠/㎡です。
ここがポイントですが、C値は実際に建てた建物でしか測定できません。
ということは、設計の段階では知る由もないということ!カタログなどの表記は過去の実績ならばよいですが、使用する建材などの設置方法などから
「おそらくこれぐらいだろう」としていることもあるようです。
(※私が勉強させていただいているスーパーウォール会では全棟を測定し、その平均値を提示させていただいています)
C値は小さいほど優れた気密性をもち、配慮していない一般住宅では9~10㎠/㎡、平成11年度の次世代省エネルギー基準でも(もう20年も前の基準ですね)
5㎠/㎡であれば高気密としています。e暮らすホームでは全棟気密測定を行い平均で0.5㎠/㎡以下の実績があります。

C値がかかわってくる建物性能への影響

「建物の健康」を、これから家を建てる時の判断基準にするためいろいろな性能値として知ることが大事であることは
お分かりになると思います。
その中でも気密性能は、いろいろな性能に影響を及ぼしています。気密性能によって建物の性能は実質的に設計の数値より劣り
体感にも影響します。
極端な話、一般的に比較される各性能値は気密0㎠/㎡(まったく隙間のない状態)での話といってもいいと思います。
しかし、実際の建物では「風邪」である気密性によって十分にその性能を発揮できなかったり、構造上大きな疾患(劣化)を招いたりしてしまいます。
そうなると、本当に皆さん自身の健康にも影響してきてしまいます。
そこで、C値がかかわる建物性能への影響についてみていきたいと思います。

省エネルギー性や快適性への影響

快適に(もっと言えば健康的に)過ごすためには「室温」と「湿度」の管理が重要です。
一般的に室温でいえば夏は28度以下、冬は20度以上が推奨です。湿度でいえば40~60%と言われます。
ただ、湿度には絶対湿度と相対湿度というものがあり、簡単に言えば湿度が同じ50%でも室温によってその水蒸気量は違うということです。
日本の夏はジメジメ、冬は乾燥しますから目標として夏は60%を切り、冬は40%を切らないということになります。
さて、この目標を達成するためには冷暖房を行うことになります。現在の冷暖房はエアコンを使用することが多いと思います。
気密性能が低い(隙間が多い)と夏は水蒸気を含む暑い外気が侵入し、
冬はせっかく温めた空気が天井から漏れ逆に冷気が足元から流れ込みます。
エアコンはフル稼働し電気代がかかってしまいます。これではエコとは言えません。

室内の空気への影響

建築基準法では2時間に1回すべての室内の空気が入れ替わる「換気」が義務づけられています。
設計では室内の空気量(体積)を計算してその空気量に見合った風量の換気扇を設置します。
室内の空気は、建材から発生する化学物質や呼吸による二酸化炭素などによって汚れます。
健康に影響を与えることから「換気義務」ですが、気密性能が低い(隙間が多い)と余計な空気が邪魔をしてしまい実際には換気されていないのです。
飲み物をストローで飲んでみてください。ただし、ストローに穴をあけて。そうすると吸うことができません。
飲み物を吸い込む前に穴から空気を吸ってしまうためで、換気も同じです。隙間があるとそこから外気を吸ってしまう現象が起きています。
結果、換気のされない住宅となり汚染された空気が室内によどみ健康に影響を及ぼします。換気が計画通りにされる目安の数値ですがC値=0.5㎠/㎡以下でないと十分に換気ができません。

断熱性への影響

建物の断熱性は、ZEH(ゼッチ)やHEAT20(ヒートニジュウ)などの指針によって、より高性能とするハウスメーカーも増えてきました
断熱性能はUA値(ユーエーチ)やQ値(キューチ)で表示されています。
(今回は気密性能のお話のため断熱性能については次回改めて解説いたします)
断熱はセーターを着ることに似ています。厚いセーターほど温かいですよね。
外に出ると強い北風が吹いていたとしたら、皆さん風を通さないジャンパーなどを着ませんか?
せっかく着込んだセーターの温かさを維持するためのジャンパーこそが建物の気密性ということになり性能を十分に発揮させることができるのです。断熱性能だけでは不十分ということがわかります。

劣化への影響

「壁内結露」あまり聞きなれない言葉だと思いますが、建物の劣化にはとても関係のあることで、シロアリによる被害とともに、
建物にとってあってはならない「疾患」だといえると思います。
室内の空気は水蒸気を含んでいます。水蒸気は閉ざされた空間では全体で均一になろうとしますが、
空気による移動と量が多いほうから少ないほう(この水蒸気量を絶対湿度といいます)へ移動する性質があります。
空気の移動は基本的に暖かいほうから寒いほうへ移動しますのでこの流れで水蒸気は動きます。
気密性能が低い(隙間が多い)と室内の温かいほうから冷気の入りこむ隙間(壁)に移動します。
水蒸気は絶対量が少ないほうへ移動しますから冬は外側へ夏は室内側へ移動します。
気密性能が低い(隙間が多い)と見えない壁の中で液体となってしまい(結露)、柱や土台を腐らせたり、断熱材にカビを発生させたり、
湿気を好むシロアリなどの害虫を呼び込んでしまったりしてしまいます。
気密性をよくすると、水蒸気の移動量は少なく、壁の中に侵入してもその量は微量なために有効な換気環境(壁通気)により排出されます。
(スーパーウォール工法は35年間の壁内無結露保証を付与しています)

省エネシュミレーションに影響する

「建物の健康」の判断基準である住宅性能項目の数値は省エネのシミュレーションにも用いられます。
とりわけ断熱性能は最も建物の燃費(光熱費)に関係しますので断熱性能がいい家は省エネのシミュレーションで
光熱費の削減量を知ることができるので視覚的にも家を建てる時の重要な判断材料になります。
ただ、断熱の良い住宅を建ててもシミュレーションのようにいかない場合があります。
その原因の一つは暮らし方で、いくら良い性能を持っていても使い方を間違えると燃費が悪くなります
(低燃費の車でも、渋滞ばかりの道を選んでいては燃費が悪くなりますよね)
もう一つは、気密性能です。断熱性能を表す数値にQ値(キューチ)というものがあります。
このQ値、気密の影響を受け実際には設計値と違ってしまうのです。

シュミレーションの結果と実績光熱費

実質Q値というものがあります。
次世代省エネ基準(基準値は2.7)をクリアするQ値=2.5の場合、実質Q値を計算してみましょう。
Q値も小さいほうが高性能です。

C値5の場合 2.5+5/10=3>2.7 あれっ?基準値を超えてしまいました。
C値0.5の場合 2.5+0.5/10=2.55<2.7 基準値をクリアしています。

これを冬場の光熱費に換算してみます(わかりやすく100㎡の家で計算します)
この日の内外気温差を15度で8時間暖房したとすると

C値5の家
→実質Q値3×100㎡×15℃=4500W×8時間×3600S=129.6MJ/3.6MJ=36kwh

C値0.5の家
→実質Q値2.55×100㎡×15℃=3825W×8時間×3600S=110.16MJ/3.6MJ=30.6Kwh

1Kwの電気代を平均28円で計算すると1日151.2円。1か月で約4,500円。4ヵ月暖房すると18,000円。
35年のローンを組んだとすると630,000円。
同じ断熱性能の住宅なのに気密性能でこんなに差が出ます。
さらに電気代は上がり続けていますからもっと大きな差になることでしょう。
※e暮らすホームの住宅がシミュレーションの結果よりも実績のほうがよくなるのはこのおかげです。

※計算式について…電力量の単位として、1 キロワット (= 1000 J/s) の電力を 1 時間 (= 3600 s) 消費したときの電力量である 1 キロワット時 (= 1 kJ/s × 3600 s = 3.6 MJ)

気密性能が低い(隙間が多い)と設備投資が無駄になる

気密性能は設備投資にも影響を及ぼします。
健康な室内環境のためには換気が欠かせません。室内の汚れた空気は換気によって排出され代わりに新鮮な外気が入ってきます。
しかし、この外気、冬は冷たく乾燥し、夏は暑く湿気多く含んでいますのでせっかく冷暖房した室温や湿度に影響してしまいます。
そこでっ!「熱交換換気システム」(一種換気)というシステムが活躍をします。
快適な温度の室内の空気と外気の温度のみを交換しこれにより温湿度変化を極力抑えることができるのです。
(e暮らすホームではLIXILエコエア90を採用しています)
しかしながら、気密性能が低い(隙間が多い)と給気口以外から空気が入ってしまうために、換気システムが行う換気量が
相対的に減ってしまいせっかくの熱交換がされないことと同じになってしまいます。
一般的に多い換気(第三種)より高価な熱交換換気システムなのですが、その性能が発揮されないようでは無駄な投資となってしまいます。

新型コロナウイルスが心配

高気密の住宅だと、いわゆる3密の状態なのではと思われる方もいらっしゃるかもしれません。
ある著名な建築家の方も、「風通しの良い京都の町屋みたいな家が良い」と言っています。
しかし、私の地域では建物も密集していますし、そもそも、風は思い通りの方向に吹いてくれることは稀なのです。
また、花粉やPM2.5、埃などの対策もできないために自然換気に良い時期は限られます。
前述のとおり、気密性能の良い住宅は換気が計画通りになされるため常に新鮮で上質な空気なので、風通しの良い家といえます。
さらに、冬でも部屋のどこでも暖かい環境は人の免疫力を高めてくれます。

その他の性能表示へのかかわり

①地震に対する強さ…シロアリや腐朽菌によっていくら設計上強い家でも、
構造がもろくなってしまうことを考えると
壁内結露を起こしにくい高気密性能によって未然に防止できるといえます。
②遮音対策…気密性能が良いということは、それだけ音が外に漏れにくく中に入りづらいということ。
遮音性能にも一役買っているといえます。
③高齢者や障がい者にとって身体に負担を与えてしまうのが温度変化。
ヒートショックを例にとると年間約17000人の方がヒートショックで亡くなっています。
1件の重大事故の影には29件の軽傷事故があり、さらに300件の無償事故があるといいます。(ハインリッヒの法則)
ということは重大事故にならずとも何らかの健康被害を受けている方はより大勢いるわけです。
部屋間の温度差をなくすことでこのような事故を未然に防ぐことができます。(温度差のバリアフリー)

 

小さな隙間が大きな効果をもたらすことがお分かりいただけたら幸いです。
長文、お読みいただきありがとうございます。
でも!本当はまだまだお伝えしたいことたくさんありますので、家づくりをされる方はまた遊びに来てください!

齋藤 崇

 

 

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