「良い家」とは?住宅性能の何を見る? 省エネと耐震を考える家づくり その2『省エネ性能』

省エネ性能

今回は住宅の省エネ性能についてみていきたいと思います。
なぜ、住宅の省エネ化が必要なのでしょうか?
e暮らすホームの家づくりは「ご家族」「建物」「地球」「家計」の「4つの健康」を実現します。
この、4つの健康すべてに関係するのが住宅の省エネ性能なのです。
気候変動を引き起こす温室効果ガス排出はこれからの10年が地球の未来を左右する10年と言われています。
2020年10月26日 菅総理大臣は所信表明演説で「2050年までに、温室効果ガスの排出をゼロにする、
2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」と宣言しました。
脱炭素社会にむけて大きく動き出している世界。CO2排出を抑えること(省エネ性能)は今までよりもさらに推し進めていかなければならない時代です。
今回は、省エネ性能についてのお話です。

日本の省エネルギー基準はレベルが低い

住宅性能表示制度による温熱環境に関する省エネルギー対策等級では今まで4等級に分類されていました。
世界的な脱炭素に向けた住宅の断熱性能向上の動きのなか、日本の省エネルギー基準は、30年は遅れていると言われるように大きくおくれをとってしまいました。
そのような背景から、2020年に「省エネ基準の適合義務化」がされることになりました。
この基準は省エネルギー対策等級4で最高等級となりますが、そのレベルは数値を発表したときに世界に失笑されるとても低いものとなっています。
日本の省エネ等級は、等級2(1980年・旧省エネ基準)、等級3(1992年・新省エネ基準)、等級4(1999年・次世代省エネ基準/2012年改正省エネ基準)です。
等級4といっても制定されたのは今から20年も前のこと、改正されていますが性能はほぼ同じです。

2020年の義務化見送り

国(国土交通省)は年月をかけて「新築住宅の省エネ基準義務化を2020年までに段階的に進める」施策を進めてきました。
ところが義務化目前になって、義務化を見送り「説明をすればよい」と言い出しました。
「省エネ基準義務化」を見送ったのは、下記のような理由だそうです。

■現在の住宅の適合率が低く、市場の混乱を引きおこすから、また、習熟していない事業者が大半だから→さんざん実務者にむけて講習会を実施していましたが、学ばなかった実務者は対応できないらしいので、その人たちの保護のため?
■確認審査などの体制が整わない
■例えば和風建築のような開放的な家を好む消費者がいたり、デザイン的な制限がでたり、デザイン重視の建築家が対応できないから

など、理由は「んっ?」と思わずにはいられません。
国は、省エネ住宅を建築する=建築費用が高いので消費者に多大な負担となる、との見解も示していますが、それは大きな誤りであると現在では正されました。すでに10年以上も高断熱高気密の高性能住宅に取り組んでいるe暮らすホームでも、意識の高い仲間の工務店や設計事務所でも、省エネ住宅が最もコストパフォーマンスに優れ、結果最も安いということをデータ化して実証しています。建築時の多少のコストアップは光熱費削減のほうが大きくなるのでお得になるというシミュレーションもしっかりと計算できます。
断熱のできていない住宅ほど、コストが高く、不快で、事故が起きる可能性が高く、結果コストが高いということが常識となってきました。
※2021年2月、河野行政改革担当相の会合で2050年のカーボンニュートラルに向けてすべての住宅・建築物の省エネルギー基準適合義務化をもとめ国土交通省に法改正を提言し、やらないのであれば、規制省庁を変更する可能性についても言及しました。
「国交省にできないなら規制は環境省にやってもらい、規制に基づいた指導を国交省がやるぐらいゲームチェンジをしなければダメ」
省エネ義務化に向けた流れが一気に進みそうです。

住宅の省エネ性能を実現するための対策

車による交通事故は、年々減少しています。
車が持つ安全性能は、各自動車メーカーの安全性能に対する自主的な探求心と行動によるもので、
これにより重大事故の減少につながっていると考えられます。一方、住宅業界は残念ながらヒートショックなどの重大事故は増え続けています。
省エネルギー住宅は、エネルギー消費量を抑えるだけではありません。
心身ともに健康になる「人にやさしい環境」が実現できます。結露を起こしにくく「住宅の耐久性」が上がります。
前に述べた「4つの健康」は住宅がもつ「必要最低限な能力」なので特別なことではありません。車同様「当たり前」の能力だと思います。
省エネルギー住宅の実現には「断熱」「日射遮蔽」「気密」の3つが重要な対策となります。まず、この3つを考えましょう。

断熱性能はUA値(ユーエーチ)

熱は暖かいほうから冷たいほうへ移動します。夏の暑い外の空気は冷やした室内のほうへ、冬の暖かい室内の空気は寒い外へ移動しようとします。
熱は屋根、壁、床、窓(外皮)を通して移動しますが、この移動量を少なくするために行うのが「断熱」です。
断熱性能は「外皮平均熱還流率」UA値で表されます。熱の移動による損失を外皮の面積で割って求める数値で、数値が小さいほど省エネ性能に優れます。
2020年義務化される予定だった数値は0.87W/㎡・Kとなります。

日射遮蔽はηAC値(イータエーシーチ)

夏の室温上昇の原因は、強い日差しによるものです。
夏は日射を遮蔽して室内の温度上昇を抑えて、冷房エネルギーを削減します。
住宅の日射遮蔽性能は、「冷房期の平均日射熱取得率」ηAC値で表されます。
入射する日射量に対する室内に侵入する日射量の割合を外皮全体で平均した値となります。数値が小さいほど省エネ性能に優れます。

気密性能はC値(シーチ)

住宅の隙間は、その隙間によって空気が出入りし室内外で移動します。
水蒸気の移動により、結露の原因となったり、余計な空気が出入りすることで、計画換気による換気に影響を及ぼします。
住宅の気密性能はC値で表されます。小さいほど気密性能に優れます。詳しくはコラム気密性能と建物の健康をご覧ください。

住宅の省エネルギー基準「義務化される予定の最低基準」を上回る基準

省エネルギー基準を上回る基準として「低炭素建築物の認定基準」
「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH・ゼッチ)」などが設定されています。
「低炭素建築物」の認定は住宅の省エネルギー基準で定める一次エネルギー消費量に対し、
10%以上の削減と低炭素に資する措置等を採用するなどで認定され、所得税などの軽減を受けることができます。
「ZEH(ゼッチ)」は外皮の性能を大幅に向上させた上に高効率設備の導入、再生可能エネルギーにより年間一次エネルギー消費量がゼロとなることを目指した住宅です。

ZEHの普及にむけての目標

政府は住宅については2020年までに標準的な新築住宅で、2030年までに新築住宅の平均でZEHの実現を目指す」と目標設定をしています。
地球温暖化対策計画では「2020年までに注文戸建住宅の半数以上をZEHにすることを目指す」こととなっていました。
2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」では、「2030 年までに新築住宅・建築物について平均で ZEH・ZEB 相当となることを目指す」こととし、中短期工程表のKPIとして「2030年の新築住宅及び新築建築物について平均でZEH、ZEBの実現を目指す」こと、及び「2020年の新築住宅の省エネ基準適合率を100%とし、ハウスメーカー等の新築注文戸建住宅の過半数をネット・ゼロ・エネルギー・ハウス化する」となっています。

HEAT20による評価基準

「HEAT20」とは、地球温暖化とエネルギー、そして居住者の健康と快適な住まいを考え、2009年に研究者、住宅・建材生産者団体の有志によって発足した団体「2020年を見据えた住宅の高断熱化技術開発委員会」のことです。
HEAT20 は戸建て住宅が目指すべき住宅像と断熱性能水準をG1~G3までのグレードを提案しています。
冬期間の室内温度環境において、一定の暖房条件のもと、通年に渡る住空間の有効利用、冬季厳寒期の住宅空間内において表面結露・カビ菌類による空気質汚染や健康リスクの低減等も踏まえ体感温度をもとに最低温度を設定しています。G3ではおおむね15℃を下回らないという高性能な住宅となっています。今や、断熱性能の新基準とも言えます。

国の基準とHEAT20の基準

国の基準とHEAT20の基準を並べてみました。私たちe暮らすホームの地域は地域区分は6地域です。6地域の基準のUA値は下記の通りです
省エネ基準→0.87、ZEH基準→0.60、HEAT20 G1→0.56、G2→0.46、G3→0.26となります。
これを見ると、国の基準はレベルが低いことがわかります。
※北海道(1地域)の省エネ基準は0.46です。

e暮らすホームの良い家

良い家の条件として家の性能値を見てきました。
最後に、住宅の性能値が意味するものをご理解いただければ幸いと思います。
e暮らすホームが考える良い家とは一言でいうと「心身共に健康で幸せな暮らしのできる家」です。
「健康」は「健康な身体と康らかな心(健体康心)」からきています。
身体に負担のない環境のために「暖かい」空間はおおむね15℃を下回らないことが必須でそのためにUA値は0.26が必要と考え実践します。
ちなみに、住宅と特に関係あるヒートショックの事故死ですが、日本は断トツワースト1位、ドイツに比べてなんと18倍!です。
「暖かい」家が家族の絆をより育み心も豊かになります。
家族みんなが健康で豊かな暮らしが家族の幸せにつながると考えています。
気候変動とりわけ地球温暖化防止にすでに動きだしている世界。
当然ながら、子供や孫の世代まで100年続く我が家でなければなりません。
地震大国日本においては繰り返しの大地震に耐える家にするために構造計算による耐震等級3を必須としなければなりません。

すべての性能は、「心身共に健康で幸せな暮らしのできる家」を実現するため
そして
良い家に住むことは万人の願い!を実現するために

省エネ建築診断士 二級建築士
e 暮らすデザイン設計事務所
齋藤 崇

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